idea factory from newspaper 2003 8 8
農業の高齢化(development of industrial methods of cultivation?)
現在、日本では、少子高齢化が話題になっていますが、
それより、深刻な問題があります。
それは、農業従事者の高齢化の問題をどうするかという問題です。
何年か前に、関東地域の農業地域を何か所か訪問した時に、
改めて、実感したことがあります。
それは、農村において、農業従事者の高齢化がさらに進んだことです。
農業従事者の若手と言っても、60才台です。
ある地域では、こんな悲劇も聞きました。
農地は、規制によって、農業従事者にしか売ることができません。
しかし、農業従事者は、みんな、高齢化していますので、
農地を売って、現役を引退したい人が多いのですが、
農地を売りたくても売れない状態となっています。
現役を引退したくないのに、リストラでクビになるサラリーマンと逆です。
そこに、突然、公共施設の建設の話がありました。
こういう場合は、農地に対する規制が、例外となる場合があります。
公共施設と言っても、社会福祉法人が建設する福祉関係の施設でした。
この話に、高齢化した農民は、我先に飛びつきました。
しかし、福祉関係の施設をどこに建設するかで、大きな問題になりました。
それは、単なる建設反対ではなく、
自分の農地に建設してくれないならば、建設反対であるという主張です。
このため、社会福祉法人は、建設地を選定するのに、
大変、混乱したそうです。
その後も、大変なことになりました。
農地を社会福祉法人に売れた農民と、売れなかった農民の間で、問題が発生しました。
まとまった、お金を手にして、引退する農民と、
そうならなかった農民とのいざこざです。
この地区は、農業従事者が全員、70歳代だったそうです。
この問題は、根が深く、深刻な問題です。
最初の問題は、農業従事者の高齢化です。
若手と言われても、60歳代です。
次に農業従事者の後継者がいないと言うことです。
所得が少なく、とても、自分の子供には、引き継げないと言っていました。
とりわけ、稲作は、どうやっても、赤字となるそうです。
稲作は、小規模農家が多く、生産効率が悪い状態となっています。
しかし、小規模農家でも、田植機、耕耘機、稲刈り機など、
ひととおりの農業用の機械を買いそろえますので、
この費用が大きい。
しかも、農業用の機械は、あまり競争がないので、高価格となっており、
さらに、耐久性も、それほど、長期間、使用できない状態です。
この状態で、小規模農家でも、
ひととおりの農業用の機械を買いそろえますので、
つまり、設備投資の過剰があります。
生産性が低く、設備投資の過剰です。
いずれにせよ、残り10年で、農村は崩壊するでしょう。
若手と言われている人が、60歳代ですから。
日本の農業は、所得が低く、生産性が低く、設備投資の過剰という三重苦に加えて、
農業従事者の高齢化と、農業従事者の後継者がいないという問題を抱えています。
この問題は、何十年前から、指摘され続けましたが、
日本政治のお家芸というか、伝統芸能である「先送り」という技術により、
何十年前から放置されたままです。
地方において、先細りの公共事業で影響を受ける地元の建設会社に、
農業参入を認める必要があります。
今のままでは、農村は死にます。
農業従事者では若手と言われている60歳台の人達が、
働けなくなった時が終わりの時です。
しかし、この期に及んでも、日本政治は、お家芸である「先送り」に終始し、
官僚は、こちらも、お家芸である「天下り先の確保と育成」に邁進しています。
ある農家の人が、スーパーで、米の値段を見て、
「これでは、商売にならない。しかし、値上げをすれば、米は買ってくれない。」
そう、つぶやいていました。
もう、お年は、70過ぎに見えました。
地方の建設会社は、時々、降ってくる公共事業という「恵みの雨」によって、
生き延びていますが、
農家には、このような「恵みの雨」がありません。
さらに問題なのは、農業の生産性を向上させると称して、
かつて、実施された農地の土地改良の問題があります。
確かに、トラクターは、通れるようになったでしょうが、
もともと、農地から得られる所得が低いので、
農民にとっては、トラクターは、通れるようになっても、メリットは少なく、
しかも、トラクターの価格は高く、高級自動車が買える価格です。
このようなトラクターを、小規模農家が一軒一軒、持っていても、
設備投資の過剰になります。
さらに、問題なのは、農地の土地改良に伴う農民への負担金の問題です。
この負担金が、小規模農家にとって、つらいものになっています。
この農地の土地改良は、かなりの高コストでした。
農民が何軒かで集まり、集団を作って、自力で、
建設会社に発注して、土地改良をさせたら、
地方公共団体が実施する土地改良より、
費用を、3分の1程度、減らすことができたそうです。
農民も、地方の建設会社も、弱者です。
しかし、弱者が弱者を食う構造になりました。
誰が、利益を得たのでしょうか。
つまり、農民は、江戸時代と同じで、
「生かさず、殺さず」です。
最近では、これにサラリーマンも加わりました。
マスコミは、サラリーマンの家庭が多いので、
農村特集をやりませんが、
しかし、農村においては、さまざまな問題が放置され、
ある意味では、少子高齢化の問題や、失業問題より、
深刻な問題となっています。
どうして、特集しないのでしょうか。